わたしと母は、ずいぶん昔からラブラドールを我が家に迎えることを夢見ていました。
そのきっかけは、漫画のハッピー。
盲導犬の一生を描いたストーリーで、ラブラドールの描写がすごくリアルに表現されていて大好きな漫画でした。
当時小学生だったわたしも母と一緒になってハッピーを読み、ラブラドールを飼うことに強い憧れを抱いていました。
もう数十年前の話です。
そのころ、盲導犬の不適格犬(キャリアチェンジ犬)ボランティアというものが存在すると知り、申し込みをすることに。
縁あって、「エジソン君」という不適格犬のお迎えを打診する電話をいただき、

今週末、引き取りに伺います!
と2つ返事で協会にお迎えに行くことをお約束。
しかし、エジソン君が我が家に来ることはありませんでした。
どうしてもこの話はちょっと愚痴っぽくなっちゃいますので、
気分を害される可能性がある方は読み進めることをお控えください。
※当記事で登場する、「エジソン君」は仮名です。実際には別の名前の子でした。
不適格犬ボランティア応募までの経緯
ハッピーを読み、盲導犬に興味を持ったわたしたち。
アイメイト協会や盲導犬協会では不適格犬(キャリアチェンジ犬)を引受けるボランティアを募集していることを知ります。
しかし、当時我が家では乳がんを患った猫のレモンを飼っていました。
わたしが生まれたときから一緒に育った猫で、そのころすでにかなりのおばあちゃん猫。
がんも転移を繰り返しており、おなかがボコボコになってこれ以上の手術は難しいと、対処療法で余生を過ごしているような状態でした。

そんな病状で、新しい家族を迎えるのはレモンにかなりのストレスになりそうで、かわいそう!
こんな思いもあり、不適格犬ボランティアにすぐには申し込みできない状況が続いていました。
レモンの死
レモンは長い闘病生活を本当によく頑張り、ある日お空へ旅立ちます。
この日のことは本当によく覚えています。
遊ぶ約束をして外出しかけたわたしが、外で隠れて息を引き取っているレモンを見つけました。
友達に泣きながらキャンセルの電話をしたことがすごく鮮明に記憶に残っています。
アイメイト協会へ不適格犬ボランティア申し込み
レモンの死を受けて、母は不適格犬ボランティアへの申し込みを決めます。
当時問い合わせた際、不適格犬を引受けるにはかなり時間がかかるといわれていました。

アイメイト協会では、不適格犬が出た場合には、まずその子を育てたパピーウォーカーさんの元に連絡をしています。
パピーウォーカーさんが引受けることができない場合に、ボランティアのリストに載っている方に順番にお譲りしています。
「そもそも、不適格犬が出ることが少ない」「順番待ちをされているボランティア希望の方もたくさんいる」ような話があったため、長く待つことが予想されました。
そのため、母も、すぐに新しい子がほしい!というわけではなく、順番だけ取っておこうというつもりだったそうです。
思いのほか早く電話がかかってきた!
申し込みから数か月後くらいでしょうか。
想定していたよりもずっと早く、アイメイト協会から電話がかかってきました。

「エジソン」という名前の不適格犬の引き取りをお願いしたいと思います。
そんなに早く引き取りの打診が来るとは思っておらず、家族でびっくり。
母はその電話口で即、お迎えの約束をしたそうです。

今週末、引き取りに伺います!
それから、家族の会話は我が家の子となる予定の「エジソン君」の話でもちきりです。
どんな子が来るのか、期待でいっぱいでした。
「エジソン君」は、ほかの人に引き取られていった
次の日、再度アイメイト協会から電話がありました。

本当に申し訳ございません。
本日、エジソンは別の方に引き取っていただきました。
このような結果になってしまって申し訳ありません。
週末迎えに行く約束をした子を、ほかの方に渡してしまう。
そのようなことがあるということは全く想定していなかったため、動揺して母もこの時の会話はあまり覚えていないそうです。
ただただ、ショックな気持ちが大きかったといっています。
我が家に迎えることをすごく楽しみにしていた分、家族全員すごく落ち込みました。
アイメイト協会の当初の説明に沿うなら、「第一候補であるパピーウォーカーさんでは引き取りができない」という確認を踏まえてのボランティアへの連絡だったハズ。
そのため、パピーウォーカーさんが引き取った可能性は限りなく低いと思います。
(もちろん、一度断ったけどやっぱり・・・ということもあるのかもしれませんが)
母の予想では、
- 恐らく施設見学に来た方で、一目見て気に入って連れて帰ったのではないか。
- そしてその方がかなりの額の寄付をしたのではないか。
あくまで予想です。
先ほども書いたように、パピーウォーカーさんがやっぱり自分の育てた子を手元に置きたかったのかもしれない。
不適格とされたその子が、別の形で活躍することになったのかもしれない。
ボランティアのリストの順番を間違えていたのかもしれない。
むしろ、我が家が不適格犬ボランティア家族として不適格だったのかもしれない。
自分の納得のいく理由を、いろいろと考えました。
しかし、どんなに考えたところで、結局わたしたちは我が家に来るはずだった「エジソン君」を、一度も見ることが叶わなかったことには変わりません。
アイメイト協会から、納得のいく理由を説明されていたら、また心情も変わっていたかもしれませんが、「しかたない」で気持ちを片付けることができないくらいがっかりしました。
そのあとしばらく、この出来事を消化することができず、

誰かに横取りされた!!
という気持ちでいっぱいでした。
その後、引き取りを打診する電話はなし
この話のもう一つ不可解な点は、その後アイメイト協会からの連絡がなかったことです。
不適格犬の引き取り要請の電話がすでに来たということは、我が家は待機リストのトップにいたはず。
わたしたちとしては、エジソン君の件は「協会の不手際(?)で受け取りまで進まなかった」という認識だったため、てっきり次の子の連絡が来るものとばかり思っていました。
しかし、その後待てど暮らせどアイメイト協会からの連絡はありませんでした。
一度電話をいただいたことで、リストの最後にまわされてしまったのか・・・
それともすでに連絡済みとして処理されてしまったのか・・・
すごく残念なことです。
多分、うちの一件はまれな例。
不適格犬(キャリアチェンジ犬)のボランティアを希望している方、ご安心ください。(笑)
検索をかけてもこんな事例は全く見当たらないため、このようなことはあまり起きることではないのでしょう。
というか、こんなことは起きるべきではないと思います。
その後、家庭内でもいろいろな変化があり、再度不適格犬(キャリアチェンジ犬)のボランティアに申し込むことはしませんでした。
クルトンがやってくる
それから5年後くらいでしょうか。
奇跡的な縁で、お友達のおうちに生まれたクルトンをいただけることになりました。
生後1か月強のラブラドールをいただけるなんて、本当に珍しいことだと思います。
恐らく、もしエジソン君を引き取っていたら、クルトンとは出会えていませんでした。
こういった意味でも、クルトンはほんとうに我が家に縁のある子だったんだと感じます。
念願のラブラドールとの生活を、14年10ヵ月も楽しませてくれたクルトンには感謝しかありません。
それでもまだやってみたい、不適格犬ボランティア
それでも、不適格犬(キャリアチェンジ犬)ボランティアをやりたい気持ちは心の奥底で願望として眠っています。
クルトンが元気な頃も、クルトンのお友達として不適格犬のボランティアに再度申し込むことを何度も考えました。
ただ、不適格犬ボランティアで引き取った子は室内飼育が決まり。
クルトンがずっと外飼いだったこともあり、

クルトンに逆に悲しい思いをさせてしまうかもしれない・・・
そう思うと、再度申し込みには至りませんでした。
これから申し込む日が来る・・・かな?
まだクルトンの死から完全には立ち直れていないわたしたち。
毎日クルトンの思い出話に花を咲かせています。
クルトンの思い出を語るうえで、この「エジソン君」を引き取れなかった一件はかなり大きく関係しています。

不適格犬(キャリアチェンジ犬)ボランティアができる日が来るかなぁ・・・
と、夢を語るような会話もちょこちょこ出てきたり。
すぐに新しいラブラドールを迎えるのは
まだしばらくできそうもありませんので、いまはまだ無理をせず。
またいつか縁があったら、
不適格犬ボランティアでラブラドールを迎えることになる かも しれません。
※当記事で登場する、「エジソン君」は仮名です。実際には別の名前の子でした。